ステッチが運営する人材育成スクール「デジタルハリウッドSTUDIO松本」はデジタルに特化した様々なイベントを長野県松本市で開催しております。今回は「松本ものづくり産業支援センター」と共催し、3DCGアーティストの金森慧監督の登壇セミナー『“好き”を世界へ発信する』を開催しました。このセミナーは、金森監督が「デジタルハリウッド大学」の卒業生であることをきっかけに、デジタルハリウッドと連携をして実現されました。金森監督は、自身の卒業制作である3DCG作品の「Origami」で第51回 学生アカデミー賞アニメーション部門の銀賞を受賞した注目アーティストです。日本作品で学生アカデミー賞を受賞したのは「Origami」が史上初であり、歴史的な快挙となりました。本記事は、金森監督から語られた「Origami」の制作秘話や、監督が考える ''発信する'' ことの大切さについてまとめます。クリエイター志望の方や、3DCGに興味がある方の刺激になるような内容となっております。ぜひ「Origami」をご視聴のうえでご覧ください!YouTube:Origami / 折紙 | Animated Short Film by Kei Kanamori金森慧監督プロフィール2001年11月生まれ、東京都東久留米市出身デジタルハリウッド大学卒業(2024年3月)小学生の頃に読んだハリーポッターをきっかけに洋画や英語に興味を持つ。高校生の頃に独学で3DCG映像制作を始め、デジタルハリウッド大学で学びを深める。制作作品はSNSや国内外のコンテストで高く評価された。卒業制作のショートフィルム「Origami」で第51回学生アカデミー賞受賞を果たし、SSFFなどの国際映画祭でも上映された。現在は国内でフリーのCG映像作家として活動しつつ、海外進出を目指して準備中。セミナーレポートセミナーは2024年12月8日に松本市のコワーキングスペース「サザンガク」で行われました。現地にはテレビ局の取材も入っており、金森監督への注目度の高さが伺えました。セミナーは「Origami」の上映会から始まりました。上映会の様子会場に訪れた皆さんは175秒間のショートフィルムに流れる美麗かつ幻想的な世界観に見惚れている様子でした。上映会の後は金森監督が登壇し、作品に込められた思いや、制作のこだわりについて存分に語っていただきました。作品のテーマを『折り紙』にした理由金森監督は小学生の頃から折り紙や洋画をはじめとする映像作品に興味を持ち始めました。しかし、折り紙をテーマにした理由は単なる趣味の延長ではありませんでした。監督は、多くの3DCG作品で折り紙が扱われる際、技術的な難しさからその変形過程や構造を忠実に表現していないことに不満を感じていたそうです。そこで、自身が小学生の頃から培ってきた折り紙の知識を活かして「折り紙を3DCGで忠実に表現すること」を卒業制作のテーマにしたのです。「自分にしかできないこと、人がやったことがないことをやりたい」という信念を抱いている監督は、その思いを形に出来たことが嬉しかったと語っていました。作品に込められた“哲学”テーマを決めた後「具体的にどのような作品にするか」を考えたそうです。そこで監督は、折り紙と命の共通点に着目しました。折り紙は彫刻など他の造形手法とは異なり、削る・切るなどの破壊的な工程を経ず「1枚の正方形の紙から形を作り、元の正方形に戻せる」という特徴があります。金森監督はこの特徴を「 命のめぐり 」と重ねました。命が「土から生まれ、やがて土に還る」ように、始まりと終わりが同じ場所に帰属するという視点から折り紙との共通点を見出したのです。このような金森監督の哲学が込められているからこそ、「Origami」という作品は独自の世界観を演出しているのだと感じました。金森監督のこだわり一番の注目ポイントは「これまでになく忠実に再現された3DCGの折り紙」でしょう。監督が曰く、これまで3DCGで折り紙を再現した作品の多くは「紙が折り重なった厚みの再現」が不十分だったそうです。3DCGでは数学的に点を捉え、繋いだ線や面を重ねて立体を表現します。そのため「厚みがない平面を折る」という操作は得意な一方、紙のように折り重ねた時に厚みが生じる物を表現することは難しいといいます。そこで金森監督は、紙を折る点を1つではなく複数に分けることで折った後の厚みを表現し、これまでにないリアルな3DCG折り紙を実現しました。そうして、「自分にしかできないこと、人がやったことがないことをやりたい」という信念を体現したのです。また、作品を通じて日本文化を伝えるために「日本の伝統文化」を取り入れることにもこだわったそうです。例えば、折り紙の質感です。登場する折り紙は全て和紙の質感が再現されていて、光が当たる部分の透け感までこだわられているそうです。キャラクターと受賞トロフィー主人公キャラクターの踊りにも注目です。「日本舞踊(にほんぶよう)」と呼ばれる伝統的な踊りを忠実に再現しており、受賞後は日本舞踊家の方から反応をいただくこともあったそうです。また、作中に登場する生き物の折り紙は「伝承折り紙」という伝統的なものだそうです。皆さんが知っている形も登場するのではないでしょうか。このように「Origami」には金森監督の細やかなこだわりが詰まっており、レポートに収まらないほど多くのポイントを紹介してくださいました。「視聴者に伝わりにくいようなこだわりが積み重なって作品というものは作られているので、そういった部分を楽しみたい。」セミナーで金森監督が語ったこの言葉が特に印象に残っています。“好き”を世界に発信することの意味金森監督は史上初の日本人受賞者となりました。一方で、フランスなどの国からは毎年受賞者が選出されているといいます。「日本の学生が海外に作品を発信するような流れがまだ弱いと感じた。」これが受賞を経て監督が感じたことだそうです。監督自身は洋画が好きで、海外で仕事をすることを目指しているため、学生アカデミー賞の存在を知ってから応募することは必然的だったと言えます。しかし、日本の学生全体で見るとこうした世界規模のコンテストに応募する例は珍しいのが現状です。制作物を溜め込むだけで発信をせず、いざ卒業制作やコンテストに応募する作品を制作する際に苦労していた学生も多いといいます。そのため、作品を人に見てもらう経験や、見てもらうために作品を制作する活動を積み重ねることがクリエイターとして成長するために欠かせないと語っていました。それがセミナータイトル『“好き”を世界に発信する』に込めた思いです。今後日本の学生が作品を世界の場に発信する流れが強まり、学生アカデミー賞の金賞を受賞する学生が現れることを願っていると最後に語りました。ラジオにも出演していただきました。ステッチ及びデジタルハリウッドSTUDIO松本代表の細谷が出演するラジオ番組「NAGANO・01・TALKS」に金森監督をゲストとしてお迎えしました。番組ではメインパーソナリティーの小林新さんを中心に、授賞式の様子や、監督が折り紙を好きになったきっかけなど、本記事に記載できなかった内容についてもお聞きしています。ぜひ下記のリンクからお聴きください。● 2024/12/11 OA「学生アカデミー賞受賞!金森慧さんゲスト(前編)」● 2024/12/18 OA「学生アカデミー賞受賞!金森慧さんゲスト(後編)」NAGANO・01・TALKSFM長野のラジオ番組「MAGIC HOUR」にて毎週水曜18:25頃オンエア。メインパーソナリティーの小林新さんと細谷がデジタル分野で活躍している専門家をゲストとしてお迎えし、デジタルに関する最新情報やトレンドをご紹介します。配信サイト「AuDee」でも配信中。AuDee:NAGANO・01・TALKS