ステッチが運営するポッドキャスト「ヒトバタラジオ」に、丸全昭和運輸株式会社 川崎研修センター長の内田さんをゲストにお招きし、全3回にわたって「人材育成・人材開発」をテーマにお話を伺いました。1989年の入社から勤続37年、営業・人事・内部監査など様々な部署を歴任した後、2022年の研修センター開設とともにセンター長に就任。今まさに会社の教育変革に取り組む内田さんに、人材育成の考え方から具体的な制度設計まで、たっぷりと語っていただきました。この記事では、シリーズ全3回の内容を論点ごとに再編集してお届けします。ポッドキャスト本編では内田さんのお人柄あふれるエピソードや笑い声も含めてお楽しみいただけます。ぜひヒトバタラジオからお聴きください。この記事を読むとわかること「育てても辞めるかもしれない」という不安に、現場の育成責任者がどう向き合っているか人材育成がうまくいかない会社に共通する落とし穴と、その処方箋中小企業でも今日から始められる、心理的安全性を軸にした育成の第一歩ゲスト丸全昭和運輸株式会社 川崎研修センター センター長内田公彦さん「育てても辞めるかもしれない」——それでも育成に投資すべき理由人材育成の話を始めると、必ずといっていいほど出てくる本音があります。「育てても辞めてしまうかもしれない」。ステッチでチームリーダーを務める中山さんも、収録中に「メンバーの育成に時間をかけても、この後転職されたらと思うことが結構ありますね」と打ち明けました。内田さんは「理解できますよ」と受け止めながらも、こう話します。「我々教育者が目指さなきゃいけないのは、一人一人が自らのキャリア自律ということができる組織づくりだと思っているんですね。この会社で成長できるとか、そういったことを実感させることが、まずは何よりも大切なことだというふうに考えています」さらに内田さんは、転職という現象を別の角度からも見ています。「退職を決めてから後で退職の理由というものを考えるという傾向が強いんじゃないかな」という言葉が印象的でした。つまり、「会社が嫌だから辞める」というより、「なんとなく辞めたくなった気持ちが先にあって、理由はあとから付く」ことが多いのだと。だからこそ、個人のキャリアを後押しする姿勢を組織として持ち続けることが、結果として離職率を下げることにつながると内田さんは言います。育成への費用をコストとして捉えている方がいたとしたら、それは間違いではないかと内田さんははっきりと言います。「会社の未来をつくるために必要な投資なんですね。変化の激しい時代において、コストという発想から脱却しないと、競争優位性というのは確立できないと思ってるんです」制度を作る前に気づいてほしい「3つの落とし穴」では実際に育成に取り組もうとした時、何がうまくいかなくなるのか。内田さんが3回を通して繰り返し指摘していたのが、次の3つの落とし穴です。落とし穴①「運営側の自己満足」になってしまう中山さんが「うちの会社でも勉強会を企画したことがあったんですけど、続かなかったり、参加する側も必ずしもポジティブな想いで参加してるわけじゃなかったりして」と話すと、内田さんはすぐに「本当によくあるケースなんですよね」と返しました。熱意のある担当者が「みんなのために」と企画しても、受け手側の状況や気持ちが配慮されていなければ、ありがた迷惑になってしまう。「運営側の目線で教育の制度設計を進めると、所詮独りよがりになってしまう」と内田さんは言います。落とし穴②「現場任せ・個人任せ」にしてしまう「大切なのは、人材開発というものは会社の責任だという認識」と内田さんは強調します。社員が勝手に勉強してスキルを上げるのを期待するのではなく、経営理念に基づいてどういう社員像を目指し、どう人材開発をしていくかを、会社全体として考えることが出発点。「現場任せとか個人任せではなくて、会社全体として育成をどう考えるかということ、そこから始めればいいんじゃないかな」と話しました。落とし穴③「インプットで終わる」研修にしてしまう「インプット中心の教育というものは、社員の能力を最大限引き出すことは難しい。覚えておしまい、座学でおしまい、それはもう研修ではないと考えてます」と内田さん。研修で学んだことを実践し、次の研修でアウトプットする——この循環を設計に組み込むことが肝心だといいます。「受けて良かった、受けたからできるようになった」という体験の積み重ねが、育成文化をじわじわと広げていくのです。土台はたった一つ——「心理的安全性」がなければ制度は機能しない3回の収録を通じて、最も多く登場したキーワードが「心理的安全性」でした。最終回で内田さんは「この3回を通して申し上げたいのは」と前置きした上で、こう語りました。「心理的安全性があれば、どんな教育でも身に付くし、どんなことでも自分から学んでくれる。逆に、どんなに立派な制度を作っても、どんなに立派な教育をしても、心理的安全性がないと機能しないし、役に立たない」この言葉は抽象論ではありません。内田さんが実際に相談を受けた管理職の話が、その具体性を裏付けています。会議で部下が全く意見を言わず、ルールを作っても守られない——そんな悩みを持つ管理職に内田さんが聞いたのは、「朝、部下に自分から手を挙げておはようと声をかけているか」という、ごくシンプルな問いでした。できていないと気づいたその管理職に、内田さんはこう言いました。「だったら明日から握手しなさい」。パーソナリティの高瀬さんが「怖い」と反応する中、内田さんは「怖いですよね。でも一つのきっかけとして、研修に行ってきたと伝えてから握手をしようと」と続けます。半年後のクロージング研修で再会したその管理職からは、「うまくいってます。意見が出るようになってきました」という報告があったといいます。「心理的安全性というものを整えて、小さく始めることが大切なんじゃないかな。完璧な制度なんて最初から作ろうとしないで」——内田さんのこの言葉が、記事を読んでいる方の背中を押してくれるのではないでしょうか。「上司も伴走する」育成設計——制度は丸投げしたら意味がない心理的安全性という土台の上に、内田さんが丸全昭和運輸で具体的に設計してきた仕組みが、「グローサポート制度」と「チャレンジ研修」です。どちらにも共通するのが、「育成担当者や受講者一人に問題を抱えさせない」という設計思想です。グローサポート制度は、新入社員に専任の先輩社員(育成担当者)をつけて半年間サポートするOJTの仕組みです。ポイントは、育成担当者自身も事前に教育を受けること、そして「担当者に丸投げせず、職場全体で育てる」ことを前提にしていること。「上司は育成担当者の支援を行うことが非常に重要」と内田さんは言います。高瀬さんが「職場全体にサポートする体制って、地域で子供を育てるみたいですね」と言うと、内田さんも「似てますね。職場で一人の社員をみんなで育てる。いいかもしれない」と頷いていました。この制度に関わった先輩後輩が、10年・20年後も異なる部署で助け合っているという話には、中山さんも「すごいいいですね」と声を上げていました。チャレンジ研修では、「プロセスを評価する」という考え方が重要です。売上1,000万円の目標に対して100万円しか達成できなかったとしても、どんな手法でチームを巻き込み、何を学んだかを評価する。「上司も一緒にそのプロセスに関わっているから、甘やかしにならない。実はこのチャレンジ研修そのものは上司の教育でもあるんですよね」と内田さんは話します。研修が終わった後、上司が自分のOJTのあり方を振り返るきっかけにもなっているのです。中小企業でも今日からできること——「完璧な制度より、小さく始める」「ステッチみたいな中小企業でも同じようなことができるのかな」という中山さんの問いに、内田さんは「規模が小さいからこそできることもある」と答えました。社長が身近にいて、トップのOKが出ればすぐに動ける。60人なら6人1チームで10チームを作り、心理的安全性を備えたクロス階層の場を設けるだけで、立派な育成の仕組みになると言います。大切なのは完璧を目指さないこと。「やってみて意見を聞く、やってみて意見を聞く。初めてやることだから協力してほしいと言うと、どんな社員でも大抵協力してくれる」という内田さんの言葉は、育成に踏み出せずにいる多くの現場リーダーへのメッセージにも聞こえます。最後に内田さんが強調していたのは、「社員の本音を引き出せる研修を意識してほしい」ということでした。研修を受ける側が「言っていいんだ」と感じた瞬間、普段は消極的な社員が積極的に話し始め、気づきが広がっていく——その好循環が生まれてこそ、制度が生きてきます。おわりに「心理的安全性があれば、どんな教育も身につく」という内田さんの言葉は、制度や予算の話ではなく、人と向き合う姿勢の話でした。朝の握手一つで職場が変わった話など、ぜひポッドキャスト本編でも、内田さんの言葉をそのままお聴きください。⇒ ヒトバタラジオを聴く採用・マネジメントのお悩みはお気軽に「育成に取り組みたいけど、何から始めればいいか分からない」「制度を作っても形骸化してしまう」——そんなお悩みを、ポッドキャストのフォームからぜひお寄せください。いただいたお声は、今後の配信テーマにも活かしていきます。⇒ お悩み・質問を送る採用戦略から広報・制作まで、まるごと任せたいならステッチの採用支援サービス「ヒトハダジンジン」では、採用戦略の立案から、広報コンテンツの企画・制作まで一気通貫でサポートします。「人が育つ会社」をつくるための発信や採用ブランディングを、一緒に設計しませんか?⇒ ヒトハダジンジンについて詳しく見る